【あらすじ・レビュー】『流転の中将』激動の幕末。最後の桑名藩主・松平定敬は時代に抗おうとした。


皆さんは桑名藩主・松平定敬さだあきをご存知でしょうか。

日本史、特に幕末がお好きな方なら「もちろん知っている!」とい方もいるかもしれませんが、一般的にあまり知名度の高い人物とは言えないでしょう。

会津藩主・松平容保かたもり。ではこの方はどうでしょうか。ご存知の方も多いのではないでしょうか。松平定敬とは、容保公の弟にあたる人物です。
この本は最後の桑名藩主・定敬と桑名藩の視点から幕末の動乱を描いた物語です。

『流転の中将』の概要

タイトル流転の中将
著者奥山景布子
出版社PHP研究所
出版日2021年6月3日
ジャンル小説



著者の奥山氏は歴史小説をメインに執筆されている方です。

代表作は『葵の残葉』でしょうか。幕末の高須四兄弟を描いた作品です。石高わずか三万石の大名家に生まれた四人は、幕末の動乱にあたり維新派と徳川方に別れて戦う運命になります。

今回紹介する本書はその高須四兄弟の八男・定敬が主人公となります。

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『流転の中将』のあらすじ

ここからはネタバレを含みますのでご注意ください!

松平定敬とは

冒頭でも述べた通り松平容保のことは、ご存知の方も多いと思います。

幕末に京都守護職を務めた人物で、かの新選組はこの人が藩主を務める会津藩のお預り、つまり下部組織という扱いになります。大河ドラマ「八重の桜」では綾野剛さんの好演も話題となりましたので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。

その弟である定敬。元は高須松平家という大名家の八男として生まれ、婿養子として桑名藩に出されます。そして幕末の京においては一橋慶喜と容保と共に一会桑として京の治安維持に尽力します。

しかし時は激動の幕末。王政復古の大号令から始まる徳川の終焉。新選組や会津藩が迎えた結末は皆さんもご存知だと思います。

では定敬と桑名藩が迎えた結末はどうだったのでしょうか。

動乱の幕末

幕府と朝廷のため尽力するも、王政復古の大号令で掲げられる錦の御旗。

所司代として京で絶大な権力を持っていたにも関わらず、一転して逆賊という汚名を着せられてしまう。物語はそこから始まります。

慶喜と共に京から江戸に戻ることへの迷い、そして慶喜の裏切り。江戸に逃げ帰ったと非難される屈辱。各地で転戦を続けるも敗戦。会津での容保との別れ。蝦夷地での再起、そして海を越えて上海へ。

逆賊という汚名を着せられながら、生き延びることを余儀なくされた人生と、それに抗おうとする心。

武士としての定敬が描かれる一方で最愛の女性との別れなど、定敬の人間らしい一面も丁寧に描かれています。

家老・酒井孫八郎

前述でも述べた通り、この物語は松平定敬と、桑名藩の視点で描かれます。その桑名藩の視点を代弁するのが家老・酒井孫八郎です。

新政府からは定敬の首を求められますが、主君の首を差し出すことはできないと拒みます。では降伏し恭順するようにと求められても、肝心の定敬本人が各地で転戦を続けている状態ではそれも難しい。

藩内でも、恭順派と交戦派で意見が分かれ、藩政もままならない。しかし主君を守るためには恭順しかない。ですが孫八郎としても新政府のやり方は好感の持てるものではありません。その葛藤もよく描かれています。

登場人物一人ひとりの心理描写が細かく、とても読みごたえがあります。物語のテンポも良いので、一気に没頭してしまいます。

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『流転の中将』の口コミ・評価

良い口コミ・評価

幕末期の桑名藩主、松平定敬を主人公にした歴史劇。衝撃的な慶喜の逃亡から、朝敵認定、そして柏崎・会津・函館・上海へと再起を志しながら、流れていくというストーリー。桑名藩の家老・酒井孫八郎の視点もあり、両者の思いが交互に語られていく。松平定敬たちの視点から旧幕府側の思いを知れるという面白さはあるが、物語の盛り上がりに欠けた作品ではある。「思い」という価値でどこまで切れるのか、という疑問に、わたしはいつも歴史小説を読むとき漂着する。これは一つの(歴史)ロマン主義であると思う。

読書メーターより引用

星4。物凄く面白かった!高須藩四兄弟の話をもっと読んでみたい。

読書メーターより引用

幕末明治維新の時代、高須四兄弟の一人で桑名藩主になった松平定敬の物語。松平定敬は、京都所司代として兄松平容保とともに幕府のため尽くすが、鳥羽伏見の戦いの後に朝敵とされて、京都、江戸、越後、会津、函館、そして上海へと、まさに流転し続けた。明治維新の荒波の中で翻弄させられた定敬が、長岡藩の河井継之助、新撰組の土方歳三などの人物と出会っていくシーンは面白い。 高須四兄弟の物語は、同じ著者の「葵の残陽」も読んでいたのでより背景が理解しやすかった。高須四兄弟の物語をもっと読んでみたい。

読書メーターより引用

『流転の中将』の良い口コミを見ていくと、読み応えがあった、面白かったという意見が多く、作品の世界観を満喫した方が多かったようです。

悪い口コミ・評価

翻弄されている半生が気の毒だった。慶喜と江戸に行ってから、何がなんだかわからないままに二度と姿を見せるなと言われ、味方を得ようと情報もないままに東北を彷徨い、ついには北海道まで。殿様になっても自分の意思を持って行動できず、部下に世話をされている様子は部下を率いていける人とは思えなかった。

読書メーターより引用

竜頭蛇尾で話の締め方がイマイチ。なに思い西南戦争に出兵したのかまで描くべきだった。

読書メーターより引用

何が言いたいのか書きたいのかがよくわからなかった。幕末の三重藩の藩主が藩の存続を願っていながら恭順と抗戦の間を揺れ動き、函館まで行く。と言って榎本たちと立て籠もることもなく、また横浜に戻り遂には上海にまで密航することになる。へーそういう藩主もいたのかというのが正直な感想。

読書メーターより引用

『流転の中将』の悪い口コミを見ていくと、戦闘のシーンが少なく、藩主としてのリーダーシップを感じなかったという意見もありましたが、少数派のようです。

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『流転の中将』を読んだ感想

松平容保や新選組、慶喜はやはり幕末を語る上で非常に有名ですが、定敬のことは名前くらいしか知りませんでした。

その定敬と桑名藩の視点から幕末を見るというのは新鮮でもあり、新たな気づきもあり、非常に面白かったです。

口コミでもあるように時代に翻弄された人生でありながら、ただ流されるだけではなく懸命に抗おうとしている描写が丁寧で良かったです。

『流転の中将』はどんな人におすすめ?

『流転の中将』はこんなひとにおすすめです。

  • 歴史、幕末が好き
  • 時代小説、歴史小説が好き
  • 歴史小説を読んでみたいが、何から読めばいいか分からない
  • 幕末に興味がある

おわりに

いかがでしたか?

歴史小説の醍醐味とも言えますが、主人公を始めとする登場人物たちが実在したということに感動を覚えます。

もちろん松平定敬も酒井孫八郎も実在したのです。
解釈はもちろん著者によりますし、受け取り方も読者の皆様次第です。
『流転の中将』を読んで、幕末という時代について思いを馳せてみませんか。

読書がもっと楽しくなりますよ♪

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