
『逆ソクラテス』の本には表題の話を含み5つの物語が収められています。いずれも小学5、6年生の男の子が主人公で、親や先生との関わりに反発を覚えながらも成長していく話です。
伊坂孝太郎さんがデビュー20年目に描いた少年たちの物語。友だち、親、学校の中で、悩みながらも前向きに進んでいく子供達に、勇気がもらえる作品です。
『逆ソクラテス』の概要
| タイトル | 逆ソクラテス |
| 著者 | 伊坂幸太郎 |
| 出版社 | 集英社 |
| 出版日 | 2020年4月30日 |
| ジャンル | 小説 |
『逆ソクラテス』は最後はスカッとする話が多いので、読みやすいです。大人の世界に関心を持ち始めた男の子たちにとって、毎日が冒険。
大人が読んでも、子供の頃に戻った感覚でワクワクしてしまいます。
『逆ソクラテス』のあらすじ

「逆ソクラテス」な大人たちとは?
おとなしめの主人公「僕」と転校してきた早熟な少年、安斎との話です。
二人は、担任の久留米先生から「駄目な子」とレッテルを貼られている草壁を何とか見直させようとあれこれ作戦を立てます。そこに「優等生」の女子の佐久間さんも参加することに。
子どもは周囲の大人からの評価に影響されて育つ、というのが安斎の考え。奇抜な計画を練っては、「僕」たちの協力のもと実行していきます。
さて、哲学者のソクラテスは「自分は知らないことがあることを知っている(無知の知)」こそ大切だと言いました。
大人になると「自分はなんでも知っている」と、先入観で物事を見てしまいがちです。その例として久留米先生が登場します。
「草壁、それは違う、さっきも言ったように、ソクラテスさんは、自分が完全じゃないと知っていたんだから。久留米先生は、その反対だよ。逆」
『逆ソクラテス』より
大人たちの先入観や決めつけにより傷付いている子どもたちは、抵抗もできず、苦しんでいることになります。
「逆ソクラテス」にはどう立ち向かう?
物語で「僕」は、聡明で少し危ないところがある安齋の言動に振り回されっぱなしです。しかし、なぜ安斎がそこまで他人の草壁のために尽力するのかが謎です。
実は、安斎親子自身が先入観を持たれて生きています。それは自分のためでもあったことは、最後に明かされています。
安斎は頭の回転の良さ、そしてすばやく行動を起こすことで身を守ってきました。そして、最も大切なことは、自分の心を強く持つということ。それが世間に押し潰されないために必要なことです。
「・・・。だから、ちゃんと表明するんだ。僕は、そうは思わない、って。君の思うことは、他の人に決めることはできないんだから」
『逆ソクラテス』より
物語のヤマは、後半、草壁が自分の夢を見出すところになります。
最初は訳が分からず、言われるままに従ってきた草壁でした。しかし最後には、安斎に教わったセリフを自然に口にし、先生の先入観を跳ねのけるまで成長しました。
『逆ソクラテス』は夢見がちな少年の日常の冒険の話
『逆ソクラテス』は、思春期前の少年の話を中心としています。友達と比べ、自分のコンプレックスに悩んだり、異性を意識し始めたり、子供時代が終わる頃の心情が丁寧に描かれています。
学校生活が舞台の中心で、家族、友達のほか、担任の先生も重要な登場人物です。
「逆ソクラテス」の久留米先生は悪役でしたが、「スロウではない」「アンスポーツマンライク」の磯憲(先生)、「非オプティマス」の久保先生など作者のメッセージを代弁しているように感じます。
「非オプティマス」の久保先生は今まで頼りなかったのですが、学校公開の日に生徒や保護者の前で自身の思いをとうとうと述べる場面が印象的です。
「・・・。そして、その立派さが評判を作る。評判が君たちを助けてくれる」
『逆ソクラテス』「非オプティマス」より
自分の「評判」を大切にすること。それは己の自慢をすることではなく、日々徳を積んでいくことです。それがその人のプライドにつながると考えます。
『逆ソクラテス』の口コミ・評価

良い口コミ・評価
読み終えた後、収録短篇の登場人物がどう繋(つな)がっているのか、この短篇のこの人が別の短篇では誰なのか、なんてことが気になって仕方なくなりました。(後略)
Amazonより引用
相変わらずの伊坂ワールド。伏線の張り方もやっぱり上手い。
Amazonより引用
登場人物は子供中心ですが、考えてることは大人顔負け。
いじめなど世の中で昔から続いている社会問題に、伊坂さんなりの考えも盛り込まれていて、頷いてしまった。
誰でも読めて、考えさせられる一冊。
是非息子に読ませようと思いました。
Amazonより引用
笑えて泣ける話しばかりです。
『逆ソクラテス』の良い口コミを見ていくと、子供から大人まで楽しめる本となっています。道徳的だけど、ストーリーの面白さに引き込まれて一気に読んでしまう本です。
自分の子供時代を思い出させるとともに、子供にも読んでほしいという感想が多いです。
悪い口コミ・評価
しかし物語自体は平凡で、フィクションらしい露骨な都合の良さも鼻につきます。伊坂幸太郎という作者名が無ければ流し読みしたでしょう。
Amazonより引用
駄作とは思いませんが、印象に残らない一冊でした。
内容が興味の外側だったので、途中で断念。
Amazonより引用
児童書としては道徳的でとても良くできてると思う
Amazonより引用
大人が読むには物足りない
『逆ソクラテス』の悪い口コミを見ていくと、ソクラテスに関する内容とか、長編作とか思って読むと、物足りなさを感じてしまうことがあるようです。
ソクラテスの言葉から先入観を持つことの問題へと飛躍するところは、子供の世界を表現した物語だからこその発想になっています。
『逆ソクラテス』を読んだ感想

『逆ソクラテス』では、主人公たちがいろいろな友達と関わりを持ち、素直に相手の良さを認めたり、違いに驚いたり、自分の未熟さに恥じたりします。
こんなに影響を受けても、大人になって友達に会いたいかというと、微妙な感じなところも描かれています。大人になると社会的な立場もあり、昔に戻るのは難しいんでしょうね。
そこのところを「アンスポーツマンライク」では、恩師が仲立ちしていています。磯憲(先生)をきっかけに昔の親密さを取り戻そうとするのも面白いところです。
「スロウではない」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」では磯憲など作中の人物がダブって登場するという仕掛けは面白く、また読み直したくなります。
『逆ソクラテス』はどんな人におすすめ?

『逆ソクラテス』は誰が読んでも楽しめる物語です。特に小学5、6年生〜中学生や、その保護者には関心をもって読める内容となっています。
おすすめとしては、次のような人です。
- 小学5、6年や中高生の人
- 現在、子育て中のお父さん、お母さん
- 自分の小学校時代を懐かしみたい人
- 短い時間でスカッとする話を読みたい人
大人の諸事情、主人公が大人になってからの場面は、子供だと少し背伸びして読む必要はあります。でも、どの物語も明るさがあり、爽やかな読後感を味わえます。
親子で読んで、お互いに読後の感想を述べることで、コミュニケーションが深まること請け合いです。野球やバスケットボール、リレーの話では、詳細な描写もあり、スポーツ好きの男の子も楽しめます。
また短編にはいろんな登場人物が出てくるので、「そう言えばこんな子いたなあ」と、自分が子供だった頃を懐かしみながら読みたい方にもおすすめです。
おわりに

『逆ソクラテス』は、伊坂孝太郎さんの小説に興味を持っているけどなかなか読み出せないでいる人にも読みやすく、心があたたまる話です。
どんでん返しや伏線を含んだ、作者らしい仕掛けを楽しみながら、それぞれのテーマに考えさせられるものがあります。
じっくり味わって読むことで、きっと心に響くセリフを見つけることができますよ。


コメント