
『52ヘルツのクジラたち』、皆さんはこのタイトルを目にして(耳にして)どのようなお話だと想像されますか?
この一見爽やかなタイトルからは想像もつかないような、壮絶で悲しくて少し沈鬱になってしまうお話がしばらく続きます。
しかし、お話の所々に救いになるような人間模様があり、最後には深くて暗い夜の海から希望に満ちた朝の海へ出てきたような結末が待っています。
タイトルの意味も中盤でしっかり回収されますので、是非読んでみてください!
『52ヘルツのクジラたち』の概要
| タイトル | 52ヘルツのクジラたち |
| 著者 | 町田そのこ |
| 出版社 | 中央公論新社 |
| 出版日 | 2023年5月25日 |
| ジャンル | 心理フィクション |
この作品は、2021年本屋大賞第1位作品に輝いて一躍有名になった作品です。
小説家の凪良ゆうさんやカツセマサヒコさんをはじめ、多くの人々に影響を与え2024年春に映画化もされました。
町田そのこさんは『52ヘルツのクジラたち』の他にも、『ぎょらん』や『宙ごはん』など数々の有名作を出版されています。
『52ヘルツのクジラたち』のあらすじ

※ここからは本書のネタバレが含まれます。
主人公・貴瑚 の新しい人生
本作品の主人公であるキナコ(本名:貴瑚)は、過去の出来事に大きなショックを受け、知り合いのいない土地を求めて大分の田舎に引っ越してきました。
人間関係のすべてが嫌になり逃げるように引っ越したキナコですが、田舎特有の嫌がらせを受ける日々を送ります…。
ある日、キナコが気分転換にスーパーで買い物をしていると、見知らぬおばあさんに肩を叩かれます。
「あんた人生の無駄遣いやがね」
何かと思えば、働かずに暮らしているキナコに対しての説教でした。
段々とヒートアップするおばあさんを、スーパーの店員が止めに入ったことでその場を逃れることができました。
スーパーを後にして家路に着くキナコでしたが、雨が降っているうえに重たいものを買ってしまったため、段々と憂鬱な気分になります。
全て投げ出したい思いに耐えていると、過去に負ったお腹の傷が突然痛みだしその場に座り込んでしまいます。
「助けて、アンさん」(キナコにとっての恩人)
キナコは痛みに耐え、涙を流しながら必死に訴えます。
少年との出会い
キナコが「助けて」と願った瞬間雨が止み、目の前には女の子が立っていました。(後に作中で男の子であることが分かります。)
女の子はキナコに向けて傘を差しかけてくれており、その時にはお腹の刺すような痛みは治まっていました。
女の子にお礼を言うキナコでしたが、ある異変に気が付きます。
女の子の容姿は手入れをされている様子はなく、酷いものだったのです。
キナコが回復したと分かったのか、女の子はその場を立ち去ろうとします。
しかし、キナコは女の子を放っておいてはいけない気がして、理由をつけて家に連れて帰ります。
細い体に刻まれた憎しみ
女の子を家まで連れて帰ったキナコは、一緒にお風呂に入ることを提案します。
女の子は警戒していましたが、キナコには確かめたいことがあったため半ば無理やり服を脱がせます。
キナコが感じた違和感は間違いではなく、肋骨が浮くほどやせ細った体には痛々しいほどの殴られたような痣があったのです。
また、髪の毛は伸びきっており顔立ちがかわいらしかったので、男の子だということにこの場面で気づきます。
この出来事から男の子は、キナコの家にたびたび訪れるようになります。
52ヘルツのクジラたち
ある日、キナコのタブレットで鳥の動画を見ていた男の子はある動画にたどり着きます。
それは「52ヘルツのクジラ」の鳴き声でした。
クジラは広くて深い海の中でも仲間と声を届けあうことができ、歌を歌うように仲間に呼びかけます。
しかし、仲間には届かない声をしているクジラが存在します。
それが52ヘルツの鳴き声を持つクジラであり、他のクジラたちより周波数が高いため聞こえないのです。
キナコは、周囲の大人たちに届いていない男の子の叫びを受け止めることを約束します。
また、親族から「ムシ」と呼ばれていた男の子に「52」というあだ名をつけます。
ここからキナコと52の壮絶な過去が明かされるとともに、2人の運命はゆっくりと動き出します。
『52ヘルツのクジラたち』の口コミ・評価

良い口コミ・評価
後半からの勢いが凄かった。誰も彼も完璧じゃなくとも、互いに通じ合う声を聞く人がどこかにはいる、そんな希望を抱かせる本だった。
読書メーターから引用
この物語は現代を現しているようです。虐待が取り上げられていますが、虐待でなくても様々な事情で孤独感を抱いている人に届いてほしい一冊です。
読書メーターから引用
52ヘルツの発想が良いですね。それにしても虐待の連鎖は悲惨です。苦しくても助けてくれた人に出会えてハッピーエンドになっているので、良かったです。
読書メーターから引用
『52ヘルツのクジラたち』の良い口コミを見ていくと、重く取り扱いづらい内容ですが、登場人物の温かいキャラクターやお話の最後にしっかり希望があったおかげで読み進めることができたというものが多かったです。
また、著者である町田そのこさんの文章表現が残酷でありながらもどこか美しいところも、読者を惹きつける鍵になっているようです。
悪い口コミ・評価
ご都合主義で話が進んでいく。 登場人物に深みがない。 センシティブな内容を扱うなら、もう少し調べて書いて 愛された自覚のない幼少期を過ごした人間はもっと歪です。
読書メーターから引用
どこを取っても辛い。どうやって心の安定を図るか。お互い抱き合って泣いて、絶対離れないと言い合える繋がりはなかなか無い。それだけは離さないで。希望の見える終わり方だったが、思い返せばどれもこれも辛くしんどかった。花ちゃんと淳くんかあ…。見たいけど見えるかなぁ。
読書メーターから引用
38度前後の発熱で、朦朧とするなか、読了。映画観る前に読んだほうが良かったかも。(追加)疑問というかすっきりしないこと。アンさんの52ヘルツは誰が聞いたの?そしてその結末?マイノリティの扱いが雑では。そんな思いが拭えない。
読書メーターから引用
『52ヘルツのクジラたち』の悪い口コミを見ていくと、児童虐待・性的マイノリティー・ヤングケアラーなどデリケートなテーマを取り扱っているためか、表現に不快感を覚える読者もいたようです。
しかし悪い口コミといっても、作品を毛嫌いするようなものではなく、様々な角度からの意見という印象を受けました。
圧倒的に良い口コミの方が多かったです。
『52ヘルツのクジラたち』を読んだ感想

『52ヘルツのクジラたち』は、この世界の残酷さと美しさを同時に教えられるような作品です。
この作品での残酷さと美しさは、両方とも人と人とが関わって生まれたものです。
それは偶然なのか必然なのか、我々にとって全く無関係な内容ではなく、読み進めれば読み進めるほど深く考える時間が長くなりました。
また、1回だけでも得られるものは大きいですが、2回目を読んでも新たな視点から登場人物の微妙な心の動きを感じ取れると思います。
是非、何度も何度も読み返してみてください。
『52ヘルツのクジラたち』はどんな人におすすめ?

『52ヘルツのクジラたち』は重いテーマや残酷な表現が出てくるので、作品に対して過剰に反応したり感情移入をしたりしない人は、スムーズに読み進めることができると思います。
また文章表現だけで見ると、悲壮感がありながらもどこか胸にスッと溶けていく感じですので、心地が悪いという人は少ないでしょう。
タイムリーな社会問題を盛り込んでいるので、是非現代を生きる人々に読んでもらいたい作品です。
具体的には下記の人たちにおすすめです。
- 物語への感情移入が過剰でない人
- 生きる意味について深く考えてしまう人
- 美しい文章表現や情景が好きな人
- 自分は孤独だと感じている人
おわりに

『52ヘルツのクジラたち』を読むか迷っている人は、いつでもどんなタイミングでもいいので読んでみてください。
誰にも届かないと思っていたあなたの声は、お互いに姿かたちを現さずとも必ず届きます。
この一冊があなたの心に届いたとき、海底に居たままでは見られなかった景色を見せてくれるでしょう。
本書を読むことで、あなたのひと時が優しいものになりますように。


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