
ほとんどの方が幼いころ童話に触れてきたことがあるでしょう。
桃太郎やシンデレラなど、私達の脳裏に刻まれた物語の数々は枚挙にいとまがありません。
でもそれらのほとんどは子供向け、私達は歳を重ねるにつれ触れる機会が少なくなってしまいました。
そんな大人たちに読んでほしいのが、臆病で勇敢な「私」の物語です。
『暗黒童話』の概要
| タイトル | 暗黒童話 |
| 著者 | 乙一 |
| 出版社 | 集英社文庫 |
| 出版日 | 2004年5月25日 |
| ジャンル | ホラー小説 |
『暗黒童話』は、左目を失い記憶を失った「私」が、臓器移植した左目の記憶に触れる物語です。
ホラー小説ですので怪奇的な描写もありますが、青春ストーリーとして高い完成度のある作品です。
作者初の長編小説でありながら根強い人気を持っており、今なお多くのファンがいる作品となりました。
『暗黒童話』のあらすじ

※ここからはネタバレ注意でお願いします!
記憶をなくした「私」
偶然が重なり左目と記憶を失った「私」は、臓器移植で左目を提供されます。
それ以来白昼夢のように見るようになったのは、元の持ち主が見ていた左目の記憶。
記憶をなくす前と今の私ではまるで違う人格になり、居場所を求めるように眼球の持ち主の町へ家出することになりました。
「菜深」だったらきっと、軽やかに校門を抜けて、楽しいみんなの待つクラスへ駆けて行ったのだろう。でも、今の私にはどこにも居場所がなかった。
p76より引用
アイのメモリー
この作品には、幕間に「アイのメモリー」というタイトルの童話が挿入されます。
両目を失った少女のために、人間の言葉を話せるカラスが眼球を集めてくるというストーリーです。
眼球の中には持ち主の記憶が詰まっており、夢という形でそれが現れるのでした。
まるでグロテスクなストーリーですが、物語のキーのような役割を果たします。
記憶と居場所
記憶を失い居場所をなくした私が出会ったのは、家族を亡くして同じく居場所を失った人たちでした。
そこには家族にまつわる記憶があり、生きる理由がありました。
記憶を失い居場所もなくした私は常におどおどし、びくびくしていましたが、最後には勇気ある姿を見せます。
過去と未来、その中心に立つ今の私という物語が簡潔に描かれていました。
これほど爽やかで、そして勇気のある物語を私は知りません。
『暗黒童話』の口コミ・評価

良い口コミ・評価
面白い! やられたな〜ミスリード!童話と現実が入り交ざってた。でも後半さくさく読めたし、乙一さんワールド好きだ
読書メーターより引用
乙一さん3冊目です。面白かったー。 移植手術を受けた左目の眼球に刻まれた記憶に導かれ、とある事件の真相に近づいていくというお話です。 犯人は・・最も怪しく思わなかった人が犯人だったというオチで、すっかり騙されました。女性の一人称視点での物語の進行ですが、普段あまり女性視点の作品は読まないので新鮮でした。話の展開は全く異なりますが、恩田陸さんの麦の海に沈む果実にどことなく似てる部分が感じられました。
読書メーターより引用
後半の凄惨さが性癖のオンパレードで嬉しくなっちゃった。ミステリー仕立てなんだけどトリックに偏執するわけでなくあくまで奔放なボディホラーを描くぞ!て軸がピン、と全編を貫いてて、作家乙一としての執念を感じた。
読書メーターより引用
『暗黒童話』の良い口コミを見ていくと、ミステリーな作風に叙述トリックを絶賛する声が多く見られました。
また、ストーリー終盤の切なさについても言及され、ミステリーやホラーだけでない奥深さを堪能する読者の方々が多かったようです。
悪い口コミ・評価
自分のメンタルの調子もあると思うけど、なかなか進まなかった。 オチは好きでした。
読書メーターより引用
もう、本筋と関係ないところからして、怖いんです。人への好意で目玉をえぐり出すカラスとか。それでなくてもカラスに襲われてから、カラス苦手なのに。だけどさすが乙一。怖いんだけど、グロいんだけど、切ないところもちゃんとある。初の長編小説らしいけど、やっぱり巧い。ネタバレになるから詳しくは書けないけれど、犯人である人物の、痛みに対する無感覚が恐ろしい。痛くないから何もない、わけではない、のに。これだけ怖い話なのに、悪意で行動した人がいないのに驚き。
読書メーターより引用
めっちゃ面白かった。ただグロかったけど…。切られてるのに痛みより幸福を感じるって寧ろ怖くない?でも読んでてずっと目が離せなかった。 あと鴉が眼球を抉って少女に与えるとかよくもまあそんなもの思いつくな〜って感心しちゃったよ。童話ってこんなに怖かったっけ…いや怖かったわ。そういえば小さい頃にグリム名作劇場っていうのを観てたんだけど、それにたまに怖い話があって、というか記憶に残ってるのは殆ど怖い話なんだよね。なんか今でもたまに夢に見るし。………ぁ〜こわ。……うわ思い出さなきゃ良かった…
読書メーターより引用
『暗黒童話』の悪い口コミを見ていくと、やはりホラー小説でグロテスクな表現もあるため、苦手な方も多かったようです。
しかし、このグロテスクさを称賛する声もあり、印象に残りやすい作品だと実感しました。
『暗黒童話』を読んだ感想

『暗黒童話』は、最後のシーンでハッピーエンドかバッドエンドか解釈の分かれる展開が胸にすっと残りました。
少しづつ「記憶を失った私」として記憶が蓄積されていきながら、多くの人が私に共感し思いを寄せる中、最後には記憶を取り戻し「記憶を失った私」が失われるのです。
居場所を求め、臆病ながら勇気を出すストーリーは、まるでそのような経験がないにも関わらず自分の学生時代を思い出しました。
何事もうまくいかず、しかし必死だった「私」と重ね合わせると、きっと多くの方が共感できるはずです。
『暗黒童話』はどんな人におすすめ?

『暗黒童話』は、こんな人におすすめです。
- 青春ストーリーが読みたい。
- グロテスクな物語に挑戦したい
- 人間関係で悩んでいる
- ミステリーが好き
- 読みやすい本を探している
- 普段はあまり本を読まない
爽やかさの中にミステリー要素があり、一言で説明できないジャンルが『暗黒童話』です。一つでも当てはまった方はぜひ手に取ってみてください。
おわりに

『暗黒童話』は少し重い話が展開されます。
親しみやすい文体からホラーでグロテスクな物語が展開され、びっくりしてしまう方もいるかもしれません。
しかしこの物語は童話です。
しっかりとした軸の中に多くのメッセージが隠れている力強い一冊だと思いました。
是非お時間がある時に読んでみてはいかがでしょうか?


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