
あなたは「呪術」についてどう思いますか?そんな迷信は信じない?
奇遇ですね。表紙の人物、西紋寺唱真も呪術は基本的に迷信であると考えています。
そのうえで、実践的呪術の研究にのめりこみ、本物の呪いを受けてみたいと願っている変わり者の学芸員です。
これは、呪術に興味も関心もなかった大学生の宇川琴美が、学芸員資格を取るために彼の指導を受け、呪術にまつわる風変わりな調査や事件に巻き込まれるお話です。
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』の概要
| タイトル | 学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録 |
| 著者 | 峰守ひろかず |
| 出版社 | 株式会社KADOKAWA |
| 出版日 | 2020年8月25日 |
| ジャンル | ミステリー |
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』は、民俗学や宗教学の知識に基づいた調査により、呪術にまつわる謎を解明していく伝奇ミステリーであり、タイトル通り実践的な呪術の「収集録」といえます。
峰守ひろかず先生は、妖怪ものを中心に執筆されている作家です。
著作には『絶対城先輩の妖怪学講座』シリーズ、「お世話になっております。陰陽課です」シリーズなどがあります。
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』のあらすじ

ここからは詳細なネタバレを含みますのでご注意ください。
博物館実習で丑の刻参り?
運の悪い大学生、宇川琴美は学芸員資格取得のため、北鎌倉アンティークミュージアムの学芸員、西紋寺唱真から博物館実習の指導を受けることになります。
西紋寺は呪術を民俗学、宗教学的な側面から研究する博識な研究者で、呪いは迷信であり無意味だからこそ意味がある、と言います。
それと同時に、本当に効く呪術があるならぜひとも呪われてみたい、自分の身で呪いの実効性を実証したいと心の底から願っていて、それを周囲に憚らず主張する変人です。
なんと、西紋寺は実習の第一課題として、琴美に西紋寺自身を対象とした丑の刻参りを命じます。
琴美は運の悪さを嘆きつつ、実習の単位を得るために本格的に丑の刻参りをして気づきを得ました。
さっきは何を言ってるんだって思いましたけど、実際にやってみて分かりました。やり場のないモヤモヤや怒りを何かにぶつけることで、心って軽くなるんですね。一時的なものだとは思うんですが、誰も傷つけずに自分の気持ちを楽にできるなら、それは確かに有意義で、つまり『無意味だからこそ意味がある』。それこそが呪いの存在意義……。そういうことですよね。
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』49ページより引用
その後小さな事件が起こり、琴美は丑の刻参りを人に見られてしまいます。
実習打ち切りの危機かと思われますが、琴美の丑の刻参りは思わぬ形で西紋寺に評価され、彼のもとで実習を続けることになりました。
祖母は家族を呪ったのか?
実習のために呪いにまつわる話を収集していた琴美は、友人のみやびから、先月亡くなった祖母が奇妙な人形を持っていたという話を聞きます。
祖母が人形で何かしているのを目撃したこと、みやびの祖母が息子夫婦(みやびの父母)と絶縁状態だったことから、みやびの父母は祖母が人形で家族を呪っていたと考えているようでした。
西紋寺がその人形の素性調査をすることを実習課題としたため、琴美は慣れない情報収集に励むことになります。
その人形は獣人のような形でところどころ穴が開いており、確かに不気味にも見えました。
さらに、みやびの祖母が幽霊画を買い集めて部屋に飾っていたことが分かり、みやびも、祖母が家族を呪っていたのではと思うようになっていきます。
しかし、その幽霊画の配置に意図を感じた琴美の感想から、西紋寺がみやびの祖母の行動が呪いではなかった可能性に気が付きました。
最終的に、西紋寺の調査により、みやびの祖母の真意が遺された家族に伝わります。
西紋寺唱真、呪われる?
ある日、本物の呪術師であると主張する巫鬼神薙(ふくいかんなぎ)なる男が、西紋寺の研究調査中止と記録破棄を求めて交渉に訪れました。
神薙は知りえないはずの情報を開示したり、説明のつかない現象を見せつけたりしながら、西紋寺を揺さぶり金と権力になびくのが呪術師と主張します。
西紋寺は呪いは弱者のためのものであるという信念を主張し、神薙を信用せず交渉が決裂します。
交渉決裂により、神薙は西紋寺の目の前で彼に呪いをかける儀式を行いました。
その後、西紋寺は本当に呪われたのだとしか思えないような体調不良や不運に見舞われ、急遽琴美の実習を終わらせることを決めます。
琴美は、西紋寺の学芸員としての姿勢を尊敬していたのに、神薙のような男に呪い殺されるのを待つだけの今の行動は納得できないと主張します。
できることなら、最後までちゃんと指導していただきたかったです。プロとしての姿を最後まで見せてもらいたかったと思います
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』245ページより引用
西紋寺の呪いを解くため、ひとりで神薙と対峙した琴美は窮地に陥ってしまいますが、すんでのところで西紋寺本人が助けに入ったため事なきを得ました。
呪われていたはずの西紋寺は、「プロとしての姿を最後まで見せてもらいたかった」という琴美の言葉で矜持を取り戻し、神薙の主張する呪いの正体を解明していたのです。
神薙は意外な結末を迎え、琴美は円満に博物館実習を修了しました。
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』の口コミ・評価

良い口コミ・評価
呪術に関する蘊蓄も楽しいし学芸員とはどういう仕事であるかもよく判るし何より謎解きが興味深い。続きを熱烈に待つ。
読書メーターより引用
クール系で人を寄せ付けない雰囲気のある学芸員・西紋寺唱真と、自分の運の無さを嘆きつつも、それにへこたれる様子は微塵もない陽キャの気がある女子大生・宇河琴美。第一印象では相容れなさそうな二人だったのだが、蓋を開けてみれば息ピッタリ。知識と冷静さを西紋寺が、閃きとバイタリティを琴美がとお互いの長所が噛み合って、会話と物語がポンポン進む様子が軽快で気持ちいい。
読書メーターより引用
西紋寺先生、身内にはやたら口が悪いんだけれど琴美もわりと何言われても堪えないメンタルのタフさ、どころか結構遠慮なく言い返しているので波長合うんだろうな。先生、呪術があるなら自分に掛けて欲しい、と公言して憚らないほどの呪術マニアなんだけど基本オカルト否定派なんですよね。超常的なものではなく、文化史的に実在した呪術、呪物を事件の中で解明し詳らかにしていく中でそれに関わる人間模様にも切り込んでいくのが面白い。
読書メーターより引用
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』の良い口コミを見ていくと、学芸員や呪術についての造詣の深さ、謎解き要素が評価されているようです。
ちなみに、執筆のための主要参考文献として30冊近い書籍があげられています。
深い知識のみならず、呪術にまつわる人間模様に切り込んだ内容も好評のようです。
物語の構成上、謎解きを行う西紋寺と琴美との会話による進行が多いのですが、2人の会話のやりとりの軽妙さも評価されています。
悪い口コミ・評価
「呪いなんて迷信だ」と公言しながら呪術を研究する学芸員・西紋寺と、実習を受ける大学生・宇河が持ち込まれた不可解な出来事やトラブルの謎解きをするミステリ。ミステリ要素は軽めですが、呪いや土着信仰などの造詣が深く、薀蓄が楽しめました。ラストも良い感じで終わってます。 ただ主役格の2人の性格の押しが強すぎてキャラ的にはちょっと苦手…。
読書メーターより引用
やっぱり怪奇好きが溢れている。絶対城先輩からなかなか離れられない。今回は少し洗練された感有り。
読書メーターより引用
キャラは違うけれど「絶対城先輩」と類似点が多く感じられてあまり新鮮味はなかったです。蘊蓄は面白いけれどストーリーはちょっと物足りない。本書一冊でまとまりのある構成になっているので読み切った満足感はあります。2巻が出たので読んでみようと思います。
読書メーターより引用
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』の悪い口コミを見ていくと、登場人物の性格が好みでないという感想がありました。
個性的なキャラクターのため、好みが分かれてしまうのも仕方のないことかもしれません。
また、作者の別シリーズである「絶対城先輩シリーズ」との類似点が気になる、という口コミが複数見られました。
しかし、悪い口コミでも呪いや土着信仰への造詣の深さや、本作単体の構成については良い評価がされています。
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』を読んだ感想

『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』を手に取ったのは、私自身が博物館実習を経験していることがきっかけです。
琴美が単位取得を不安がる姿や、現役学芸員から新たな学びを得ていく姿に共感しました。
さすがに、琴美のようなトンデモ実習は経験していませんが。
こんなトンデモ実習続きでもへこたれないどころか、時に西紋寺に食ってかかる琴美の芯の強さを好ましく思います。
西紋寺は紛うことなき変人です。
庇う意図皆無で呪いのターゲットを自分に変更させる男は見たことがありませんし、せっかく呪いを体感する機会なのにもったいないなんていうのはどう考えても変人です。
しかし、学芸員として研究に向き合う姿勢は確かで、琴美の西紋寺への尊敬がすんなり納得できます。
西紋寺の方も、琴美の慧眼に一目置いているのがいいバランスです。
互いに口は悪いものの、根底に相手への敬意があることがうかがえる2人のやりとりが味わい深く感じられます。
『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』はどんな人におすすめ?

『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』はこんなひとにおすすめです。
- 博物館や学芸員の仕事に興味がある人
- 民俗学に興味がある人
- 伝奇ミステリが好きな人
- 気の強いバディの掛け合いが好きな人
綿密な取材に基づいて書かれているため、間違いなく知識欲を満たしてくれる一冊です。
呪術についての専門的な内容も、琴美が読者と同じ目線で、西紋寺がプロ視点で分かりやすく解説してくれます。
バイタリティ溢れる2人の軽妙なやりとりも読み心地がいいです。
おわりに

『学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録』は、知識欲の充足、謎解きの面白さ、いきいきとしたキャラクターの魅力が味わえるお話です。
琴美の博物館実習の話はこの一冊でまとまっていますが、実は、続編もあります。
2021年3月に2巻が発売されていますので、よろしければそちらも読んでみてはいかがでしょうか?


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