
一緒にいる時間が長ければ長いほど、価値観というのはだんだんと固まってきますよね。
今まで培ってきた価値観に違和感を感じた時ほど、悩ましいときはありません。
今回紹介する一冊では、それぞれのカップルの日常にある小さな価値観のずれに対して、向き合っていく二人が描かれています。
なさそうでありそうな考え方に思わずうなずいてしまいそうになるほどの内容が、11個のストーリーによって表現されている一冊です。
『太陽と毒ぐも』の概要
| タイトル | 太陽と毒ぐも |
| 著者 | 角田光代 |
| 出版社 | 文藝春秋 |
| 出版日 | 2021年7月10日 |
| ジャンル | 恋愛短編集 |
『太陽と毒ぐも』は、角田光代さんによって書かれた恋愛短編集です。
出版年は2021年と新しめの一冊となっています。
11つある話は、それぞれのカップルが性格不一致によってぶつかる壁とどう向き合っていくかを描いており、まさに『太陽と毒ぐも』を表現したような一冊となっています。
『太陽と毒ぐも』のあらすじ

ここからはネタバレを含みますのでご注意ください!
風呂に入らない彼女
一つ目のお話である「サバイバル」では、平気で一週間はお風呂に入らない彼女と付き合う彼の話が描かれています。
彼は彼女が何日間お風呂に入っていないかを当てるクイズのやり取りをするくらい、仲は良かったのですが、周りからの反応はドン引きされるほどで、負い目を強く感じていました。
対して彼女は全くそんなことは考えておらず、むしろ何時間もかけて化粧や準備をする人に意見を持っていました。
「髪なんかちょっとくらい跳ねてても、爪ぎざぎざでも、化粧なんかしなくてもさぁ、自分自身の気持ちとか中身だけで全然勝負できんのに、自信ないからあんなんなるんだよねえー。
p33より引用
べつにさあ、外見飾んなくたって、内にもってるもんがきれいだったらそれ、外にだって出てくんのにね。あ、出てくるべきものが内側に何もないから外を飾んのか」
そんな彼女に対して「逃げたい」と考えるようになった彼はそう思いながら生活を続けます。
食生活の合わない二人
「糧」では、食事にポテトチップスなどのスナック菓子をメインに生活する彼女と暮らす彼が描かれています。
彼女がお菓子を食べている時に彼は毎回、そんな食事はやめたほうが良いということを伝えており、その言葉が彼女にとってストレスとなっていました。
ある日、同じことを言われた彼女はついに堪忍袋の緒が切れ、家を出ていきました。
「人と人が暮らすには、それぞれのテンポや事情や、性癖や主義主張があるんだからしかたないって私は思ってたの。
p203より引用
でもあんたとはその一番大事なところでいつも食い違う。食い違ってることにすらあんたは気づいてない。
自分の主張に相手を合わせるよう強要することしかできな男なんだよ、あんたは」
同じ家賃を払って生活しているのだから、その人に生活には踏み込みすぎないようにするべし、という考え方をしていた彼女の気持ちに彼ははっとし、彼女を探し回りに行くのでした。
旅行中にて
二週間の海外旅行に行ったカップルのお話です。
普段の生活では順風満帆で、二人は良い雰囲気で過ごしていました。
しかし、海外旅行中ではそれぞれの価値観がぶつかり合うことになるのでした。
旅行はワクワクすることが大事だから、とあえて宿や席を予約せず、その場の出会いに期待したい彼と、旅行に行くからには贅沢をして良いホテルに泊まり、ふんだんにお金を使い余裕のある時間を過ごしたい彼女。
彼が強引に連れた満員電車で汗をだらだら流しながら二人はずっと言い合いをし、二人は本当にこの人で良かったのか考えます。
何が何でも自分の考えを相手に認めさせたい気持ちが、満員電車に詰められた二人の距離をどんどん離していくのでした。
『太陽と毒ぐも』の口コミ・評価

良い口コミ・評価
細切れに時間をかけて読んでしまったせいもあるのか、淡々と一つずつのお話をこなしていく感じで読み進めた。 けど、最後の角田さんご自身の「あとがき」を読んで短編の中にいた恋人たちが、急に皆、色付いて思い起こされた。 ふふ、そっかそっか、そうだよね と其々の物語を思い起こしてはちょっとほっこりした気持ちになった。
読書メーターより引用
なんだろう、ず~っと違和感のある作品。共感できないけど、わからないこともない。それはないだろうと思うけど、そういうことあるよね、とも思う。 結局、恋愛って、そういうことなんだね、という点は共感。変だけど、作家さんのテクニックをちゃんと感じる本でした。
読書メーターより引用
ライトに笑いながら読める本だった。同時に、この作家はなんでこんなに細かな機微を、こんなに的確に描写できるのだろう、と唸らされた。
読書メーターより引用
『太陽と毒ぐも』の良い口コミを見ていくと、描写がとてもリアルで共感できた、という声が見られました。
様々なカップルのパターンを描いていることから、それぞれの生活を想像して楽しむことが出来たと考えられますね。
悪い口コミ・評価
買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き……。個性的な男女を描くラブストーリー⁈ それなりに面白かったが、ささる話は無かった。
読書メーターより引用
私自身に経験がないからか登場するカップルたちに共感はできなかった。つい「そんな事で悩めるなんて若いね」と大人ぶってしまったり。 実際、特異な性癖云々よりも寒暖の体感が合うかみたいなことの方が大事なのよと言ってあげたくなる(余計なお世話)
読書メーターより引用
「わ~、絶対無理!」と不快感 。イライラするカップルばかり。角田光代さんの小説はグイグイ引き込まれる物語が多いのに、残念ながらこれはダメだったなぁ。途中でギブアップ。
読書メーターより引用
『太陽と毒ぐも』の悪い口コミを見ていくと、読んでいてイライラする、という声が見られました。
確かに本書では、「そんなことある?」という場面が少々見られますが、実際に起こりそうなことでもあるので、そのリアルさを巧みに表現した著者の文章が刺さったのかと考えられます。
総合的には高評価となっていました!
『太陽と毒ぐも』を読んだ感想

『太陽と毒ぐも』を読んで、実際にこんなカップルいるのかなぁという気持ちが正直な感想です。
ただ、誰しも人には言えない癖があると思うので、恋人を通じて距離感が近づくことによって人それぞれの癖が垣間見える瞬間は存在すると思います。
その一癖、二癖もある相手の特徴とどう向き合っていくかを良く描いた短編集でした。
これは、些細な日常における場面でもそうですし、人と人とがお互いを想って向き合うことの大切さを教えてくれる一冊、と感じさせてくれます。
『太陽と毒ぐも』はどんな人におすすめ?

『太陽と毒ぐも』はこんなひとにおすすめです。
- 恋をしている
- 恋人の気になる癖がある
- 日常の一部を描いた話が好き
- 長編小説が苦手
- 価値観の違いについて悩みがある
短編小説で一つ一つの話があっさりと終わるので、いろいろな話を多く読みたいという方にもおすすめの一冊です。
おわりに

『太陽と毒ぐも』は、カップルの日常を切り取った短編小説です。
普段は言わないような細かいところが繊細に描かれており、生活という場が鮮やかに表現されています。
「自分の常識は相手の非常識」だということがこの一冊を通じてみしみしと感じることが出来ます。
そんな一冊を読んでみてはいかがでしょうか?

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