【あらすじ・レビュー】『夏の葬列』葬列によって思い出される過去の後悔、その真実を知る―

過去に「後悔したこと」を思い出すことはありますか?

その「後悔したこと」は、自分の知らないところで新しい展開があったのかもしれません。

本書では、「夏」、「戦争」、「葬列」この三つが背景としてうまく合わさっており、頭の中で描写がしやすい作品となっています。

そんな作品について、詳しく見ていきます。

『夏の葬列』の概要

タイトル日本近代短篇小説選
編集者山口昭男
出版社岩波書店
出版日2012年10月16日
ジャンル短編集


今回紹介する『夏の葬列』は、日本近代短篇小説選の一つに書いております。

『夏の葬列』の著者は山川方夫まさおさんで、現在の東京都台東区出身の小説家です。

山川さんは昭和時代の有名な日本の小説家で、新人発掘にも力を入れており、数々の作品を紹介してきました。

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『夏の葬列』のあらすじ

ここからはネタバレを含みますのでご注意ください。

戦争時代

『夏の葬列』の主人公であるサラリーマンの彼は、とある町に出張帰りで立ち寄りました。

その町を訪れるのは彼にとって2回目で、かつて戦争時代末期に疎開児童として3か月間、この町に滞在していたのでした。

町を歩いていると、喪服を着た人々の葬列を発見し、彼はかつて自分がこの町にいたころの記憶を思い返すのでした。

白いワンピースの少女

疎開児童で東京から来たのは、当時小学三年生だった主人公の彼と、彼より2歳年上のヒロ子さんの二人でした。

勉強も良くでき、大柄だったヒロ子さんは主人公の彼をよくかばってくれ、二人は頻繁に海岸に遊びに行ったりしていました。

ある日、二人で海岸に遊びに出かけると喪服を着た人々らの葬列を見かけます。

ヒロ子さんは、葬列に子供が参加するとお饅頭がもらえるということを主人公の彼に伝え、お饅頭をもらおうと二人で葬列に向かって走り出します。

その瞬間、とてつもなく大きな音が町中に響き渡りました。

艦載機が来ていたのです。

怯える主人公の彼を連れて逃げようとするヒロ子さんでしたが、ヒロ子さんは的になる真っ白なワンピースを着ていました。

自分も巻き添えをくらうと危機を感じた主人公の彼は、ヒロ子さんを突き飛ばしてしまいます。

その瞬間目の前のヒロ子さんが爆撃によって大きく跳ね上がりました。

担架で運ばれる下半身を真っ赤にしたヒロ子さんを最後に、主人公の彼はその町を去りました。

真実

話は現代に戻り、ヒロ子さんを見殺しにしたと思っている主人公の彼は、葬列を見てかつての行動を悔やんでいました。

しかし、葬列に参加している方が持っていた写真を見ると、そこにはヒロ子さんの顔写真がありました。

自分があの時突き飛ばしたせいで亡くなったわけではないと安心した主人公の彼は、近くにいた子供たちに死因の質問をします。

子供たちは、「川に飛び込んで自殺をした」と答えます。
子供たちになぜ自殺したかと聞くと、

だってさ、あの小母さん、なにしろ戦争でね、一人きりの女の子がこの畑で機銃で撃たれて死んじゃってね、それからずっと気が違っちゃってたんだもんさ

p.268より引用

実は写真の女性はヒロ子さんのお母さんなのでした。

その真実を知り、主人公の彼は深い悔恨に陥りながらゆっくりと駅の方向に歩いていくのでした。

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『夏の葬列』の口コミ・評価

良い口コミ・評価

表現の美しさでは、やはり山川方夫が最高クラスなのかも知れないと思った。そして、その美しい表現で描かれる人間は皆どこか醜く、常に漂っている何とも言えない暗さもたまらなく好きだ。

読書メーターより引用

ずっとずっと気になってて図書館で借りました。想像以上に胸をえぐられる、やるせない気持ちにさせる作品だった。

読書メーターより引用

作品としてはホントに素晴らしいと思いました。究極のシチュエーションってのは何でもないちょっとしたことから起こるんだと改めて思うと同時に、そういう時に限って狙ったかのように勇気と人間性が惨いまでに試される。そういったことを考え認識させられる良い読書でした。

読書メーターより引用

『夏の葬列』の良い口コミを見ていくと、短編ながらも素晴らしい表現力で内容に入り込めた、という声が多く見られました。

また、現実味のある話のため、多くの共感の声も寄せられていました。

悪い口コミ・評価

解説にもあるように作品としてはいわゆる一流という感じはしませんでした。

読書メーターより引用

初読みの作家さん。30年以上前の本だけど、文章はみずみずしい。ただ内容は、どうしても時代の流れを感じずにはいられない。

読書メーターより引用

「おっ」と思ったので文庫を買ってみましたが正直途中から読めなくなりました。最後の方は斜め読みになってしまい、「読む」ための読書になってしまった。

読書メーターより引用

『夏の葬列』の悪い口コミを見ていくと、時代を感じる、という声が見られました。

しかし、戦争時代の話なので、少しのジェネレーションギャップは感じられるのも無理はありません。

話の内容に対してはほとんどが高評価の口コミばかりとなっていました。

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『夏の葬列』を読んだ感想

『夏の葬列』を読んで、胸の奥底にある大事なところをつつかれたような苦しみを感じました。

それは、主人公の言動にとても共感することが出来たからです。

共感することが出来たからこそ、結末を迎えた時にグッと苦しみを味わいました。

それは悪いものではなく、共感しすぎるが故の胸の苦しみなのかもしれません。

現代に置き換えても、別のエピソードとして起こりうるパターンはありそうですし、タイトルにもある「夏の葬列」から感じ取れる雰囲気、風景がとても印象的でした。

この話の短さでここまでの衝撃を与えた作品に出会ったのは初めてで、山川方夫さんの表現力には驚きを隠せません。

もっと他の本を読みたくなるような一冊でした。

『夏の葬列』はどんな人におすすめ?

『夏の葬列』はこんなひとにおすすめです。

  • 戦争時代の話を読みたい
  • 短編が好き
  • 夏を感じたい
  • やるせない読後感が好きな方
  • 表現力のある一冊を読みたい

『夏の葬列』は、国語の教科書にも掲載されるほど有名な物語で、短編ながら多くの人間に読まれています。

おわりに

『夏の葬列』は、教科書以外にも多くの短篇集に記載されており、短編集をよく読むという方なら一度は遭遇したことがあるかもしれません。

短編集は、多くの物語があるので一つ一つの話を忘れやすいと思われがちですが、『夏の葬列』はその中でもインパクトが強く心に残る作品です。

そんな物語を読んでみてはいかがでしょうか?

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