
皆さんは、七夕の織姫に、”たなばたの七姫”と呼ばれる七つの異称があるのをご存知でしょうか?
そんな七つの異称にちなんだミステリーが、神話の時代から江戸時代までを舞台に連作形式で展開される、それが『七姫幻想』という作品です。
『七姫幻想』の概要
| タイトル | 七姫幻想 |
| 著者 | 森谷明子 |
| 出版社 | 二葉社 |
| 出版日 | 2006年2月25日 |
| ジャンル | ミステリー |
『七姫幻想』の作者・森谷明子さんは、日本の古典文学とミステリーが大好きな文学少女でした。
そして、大人になって『千年の黙 異本源氏物語』で、第13回鮎川哲也賞を受賞し、作家としてデビューします。
彼女が三作品目に執筆した『七姫幻想』は、第60回日本推理作家協会賞にノミネートされ、高く評価されました。
『七姫幻想』のあらすじ

以下は、本作品のネタバレを含みます。
幻想的な密室で崩御した大王の死の真相
一つ目の話「ささがにの泉」は、まだ神話の時代、大王(第19代・允恭天皇)が、寵愛する衣通姫の館の中で崩御しているのを発見される場面から始まります。
けれど、大王の遺体が発見されるまで、その館は、衣通姫を守り神のささがに(蜘蛛の別名)たちが夜に張り巡らせた無数の細い白糸で閉ざされていたのです。
やがて、大王の死の意外な真相が明かされます。
美しき下級女官・夏野の死を巡って
三つ目の話「薫物合」は、平安時代中期の京の都が舞台。
和歌しか取り柄のない中年貴族の清原元輔は、内裏の縫殿寮で働く下級女官・夏野と恋をします。
けれど夏野は、とある高貴な家から重要な仕事のため召し出された後、連絡が途絶えてしまうのです。
やがて元輔は、文使いの少女・軽女から夏野が死んだことを告げられます。
一体何故、夏野は死んでしまったのでしょうか。
松林の身元不明遺体と謎の美女
最後の話「糸織草子」は、江戸時代の京が舞台です。
京都西町奉行所同心に勤める夫を持つ志乃は、ある日の夕刻の松林で、両手と首から上の無い死体を発見してしまいます。
そこは昔から鬼が出ると噂がある不気味な場所でした。
後日、現場近くを再び通りかかった志乃は、一人の高貴な家の出と思われる美しい娘と出会います。
身元不明の死体は誰なのか、そして現場付近をうろつく美女は事件とどう関わっているのか、謎は深まるばかりです。
『七姫幻想』の口コミ・評価

良い口コミ・評価
七夕に合わせて。日本の神様から始まり、江戸時代までに現れる織姫様のストーリー。女性の心の機微や強さが見えて、生死がハッキリしている内容だが嫌味がない。朝顔斎王が大のお気に入り、ミステリーとしての刺々しさはないので、ミステリー苦手さんも、読み進めやすいかな。
読書メーターより引用
幻想的な短編集。読んでいて、衣摺れの音や水の音が遠くから聞こえてくるようでした。ミステリとしても中々良作。そして端々に仕込まれたネタに思わずにやっと。「朝顔斎王」がお気に入り。
読書メーターより引用
織姫の七つの異名を持つ姫たちと、雅な和歌の裏側のミステリー。一話ごとに時代は進み、登場人物に関連があって機織りのイメージ。窮屈な時代に生きた女性の物悲しさや息苦しさも感じられるが、それも含めてとても魅力的な作品。
読書メーターより引用
『七姫幻想』の良い口コミを見ていくと、特に四つ目の話「朝顔斎王」が一番好きという声が数多くありました。
歴史を舞台にしているとはいえ、本作はミステリーですので、当然ながら人の死が描かれます。
そんな中、「朝顔斎王」は、死者が出てこないのと、読後の爽やさで人気があるようです。
悪い口コミ・評価
うーん。雰囲気は好きなんだけど、文学的でちょっと読み取れなかった。
読書メーターより引用
読みやすいし平安+ミステリは新鮮だけど、ミステリが普通にミステリ過ぎて平安朝の雰囲気に馴染めてない気がする。惜しい〜。
読書メーターより引用
王朝から江戸時代まで京都のちかくの一族にまつわる七人の姫の幻想ミステリー。あまり好みじゃないな。
読書メーターより引用
『七姫幻想』の悪い口コミを見ていくと、古典文学に親しみが無い方々には、不評なようです。
また、平安の雅な雰囲気にミステリーが合わないという声もあります。
ただ、実際のところ、平安時代は疫病などが相次ぎ、貴族にとっても死は現代よりも身近なものだったのです。
そのことを頭の隅に留めておけば、イメージのギャップに驚くこともないでしょう。
『七姫幻想』を読んだ感想

『七姫幻想』は、純粋にミステリーとして楽しめる一方で、それだけに留まらないのがこの作品の魅力です。
幾つかの話の中には、「みづは」と呼ばれる複数の女性が登場したり、一つ目の「ささがにの泉」を連想させる泉のある里というのも何度か出て来ます。
どうやら全ての物語には何かしらの関連性があるようです。
更に「みづは」や「泉」という語から”水と女性”というキーワードが浮かび上がってきます。
そう考えると、この七つの連作小説の底辺には”水と人間の営み”という奥深いテーマがあるように思えてなりません。
『七姫幻想』はどんな人におすすめ?

『七姫幻想』は、次のような人におすすめです。
- 日本の古典や歴史が好きな人
- 日本の文化に強い関心がある人
- 悲恋モノでも大丈夫な人
- 女性が活躍する物語が好きな人
この作品はミステリーですので、肝心の謎解きの部分でも、日本の古典や歴史・風俗などの独特の知識が鍵となってきます。
私も、この作品を読んで初めて知ったことが多く、ワクワクしました。
このように『七姫幻想』は、読者の知的好奇心を満たしてくれる作品でもあります。
おわりに

『七姫幻想』には、衣通姫を初め、魅惑的な女性が数多く登場します。
皆、美しく聡明で、何かの才に秀でていて……そんな女性たちを男性たちが放っておくはずがありません。
けれど、彼女たちが愛する男性への想いを一心に貫こうとすると、その想いの強さが、時に、残酷な結末をもたらします。
強く美しくどこか妖しげな女性たちが織り成す幻想的なミステリーの数々。
あなたも、その世界に足を踏み入れてみませんか。


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