
図書室と聞いて、どんなイメージがありますか?本屋とはまた違った場所ですよね。
そこにもし、人生の「探し物」を見つけるためのヒントをくれる司書さんがいたら、行ってみたくありませんか?
『お探し物は図書室まで』に登場する図書室には、本だけではなく、人生で探していた物を見つけるきっかけをくれる不思議な魅力を持った司書さんがいます。
彼女に「何をお探し?」と聞かれると、つい、本以外のことを思い浮かべてしまうのです。
そう、人生において探している物についてを。
そしてそれを見つけるストーリーが、図書室から始まります。
『お探し物は図書室まで』の概要
| タイトル | お探し物は図書室まで |
| 著者 | 青山美智子 |
| 出版社 | ポプラ文庫 |
| 出版日 | 2023年3月5日 |
| ジャンル | 小説 |
この作品は、2021年本屋大賞第2位となった人気作品です。
青山美智子さんはこの他にも、デビュー作『木曜日にはココアを』では第1回宮崎本大賞を受賞。『赤と青とエスキース』で2022年本屋大賞第2位に選ばれるなど数々の有名作品を発表しています。
他の著作に『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』『月曜日の抹茶カフェ』『月の立つ林で』『リカバリー・カバヒコ』等があります。
『お探し物は図書室まで』のあらすじ

以下あらすじを含みますのでネタバレ注意です。
絵本をきっかけに、自分を粗末にしてきたことに気づく
総合スーパーの婦人服販売員の朋香は、自分の仕事にどこか誇りを持てず、転職を意識し始めます。パソコンの使い方をマスターしようと本を借りに向かった図書室で出会った司書さんがいくつかお勧めしてくれた本の最後に、なぜか絵本『ぐりとぐら』がありました。
絵本に出てくるカステラを自分で作れないかと思い立ち、久しぶりにキッチンに立ちます。そこでふと、あることに気づきます。
私は今まで、自分をなんて粗末にしてきたんだろう。口に入れるものや身の回りのものをていねいに扱わないって、自分を雑にするってことだ。
p53から引用
カステラの焼き上がりを待つ間に、洗濯物をたたんでしまい、掃除機をかける。
カステラは結局失敗したけれど、整った部屋が自分をみじめにさせず、「これから習得していけばいい。」と、カステラ作りに夢中になり始めます。
そこから簡単な料理をしてみたり、「人間らしい生活」に近づいて行った朋香。
今は生活を整えながら自分なりに手に届くものから身につけていこうと、森の奥で栗を拾うぐりとぐらにヒントを得て前向きに歩き始めます。
「いつか」が「明日」になる
一本のスプーンをきっかけにアンティークの世界にのめり込んだ35歳、家具メーカー経理部の諒は、いつか自分のアンティークショップを持ちたいと思い描くも、日々の仕事に追われていました。
彼女に誘われて行ったコミュニティハウスで図書室に立ち寄り、起業の本を借りるつもりが、司書さんのお勧めの「植物のふしぎ」という本を持ち帰ることになります。
植物が、地上と地下の世界それぞれの持ち場で役割を果たし、互いに補完し合うように、自分の夢も、会社員と、店と、両方メインでパラレルキャリアとして実現できるのかもしれない。
それを実現しているロールモデルとなる人物にもコミュニティハウスのご縁でつながります。
「つながってるんですよ、みんな。ひとつの結び目から、どんどん広がっていくんです。そういう縁は、いつかやろうって時が来るのを待っていたらめぐってこないかもしれない。いろんなところに顔出して、いろんな人と話して、これだけたくさん見てきたから大丈夫って思えるところまでやってみることで、『いつか』が『明日』になるかもしれない」
p110~p111から引用
そして最後に、「分かち合える相棒がいた方がいい」という助言ももらいます。
諒にはもうその相棒となるべき相手も、わかっていました。
運命のタイミングを逃さなかった強い確信が、諒を奮い立たせました。
朝や夜は「来る」ものじゃなくて、「行く」ものなんだ
40歳元雑誌編集者の夏美は、育休復帰後の不本意な異動により仕事に希望を見出せずにいました。
自分のかつてのポストでバリバリ働く独身女性を羨み、そんな夏美が過去「ふるえるほど楽しく」仕事を共にした作家の先生との再会で意外な言葉をもらいます。
「人生なんて、いつも大狂いよ。どんな境遇にいたって、思い通りにはいかないわよ。でも逆に、思いつきもしない嬉しいサプライズが待っていたりもするでしょう。結果的に、希望通りでなくてよかった、セーフ!ってことなんかいっぱいあるんだから。計画や予定が狂うことを、不運とか失敗って思わなくていいの。そうやって変わっていくのよ、自分も、人生も」
p169から引用
夏美もまた、図書室で司書さんのお勧めの本を借りていました。それは月に関する本で、そしてその本に導かれるように、天動説と地動説に思いを馳せ、はたと気づきます。
仕事の異動も「させられた」、家事育児も「やらされている」と被害者意識でしか考えられなかったけれど、それは自分中心の発想でいたからだと気づきます。
地球は動いているのだ。朝や夜は「来る」ものじゃなくて、「行く」ものなんだ。
今、私は何がしたい?どこに行きたい?
『お探し物は図書室まで』の口コミ・評価

良い口コミ・評価
地域のコミュニティハウスにある図書室でのお話。司書の小町さんの暖かい人柄にほっこりしました。疲れた心に寄り添ってくれる、現代に生きる中で大切なことを再認識させてくれる、とても優しい本。短編1話ごとに人生の様々な岐路に立つ人が主人公になり、自分の人生に照らし合わせて深く考えながら読めました。 本は読む人によって変わる。自身の解釈で変わる、自分の人生は自分のもの、人は一人で生きてる。この本から教えてもらったことは数え切れないほど沢山あります。 この本は手元に置いておきたい、読み返したいなと思える1冊でした。
読書メーターから引用
5編の短編からなる小説。それぞれの主人公の気持ちに寄り添う本を紹介してくれる司書の小町さん。年代も境遇もバラバラなので、読み人に一番近しい境遇の方に心を寄せながら読書するとより一層楽しめそうです。また、別々の話のようですが、どこかで繋がっていて、そういう点もとても楽しかったです。手元に置いて、たまには読んでみたくなる本だと思いました。
読書メーターから引用
コミュニティハウスの一角にあるレファレンスコーナー。ここの司書さんは、なかなかの雰囲気を醸していますが、悩みを持つ人たちにいいヒントを与えてくれます。全5話の連作短編集で、年齢も性別も職業も様々な主役が登場しますが、みな本当の「探し物」に気付き、自分に出来ることからやり始める様子がとても気持ち良いですね。羊毛フェルト、ちょっとやってみたくなりました。青山美智子さんの作品は、どれも素敵ですね。
読書メーターから引用
『お探し物は図書室まで』の良い口コミを見ていくと、司書の小町さんの、その人に寄り添う温かい人柄に惹きつけられる方が多い印象でした。
短編集なので様々な主人公が登場しますが、それぞれが「探し物」に気づき歩み始めるのを見届けると、自分も何かやってみようと勇気づけられる読後感があるのかもしれないですね。
手元に置いて、また読み返したいという感想を持つのも頷けます。
悪い口コミ・評価
ちょっと生きづらさを感じる主人公が司書さんから紹介された本で気持ちを新たにする短編集。読むと明るい気持ちになれるお話しが続きます。 しかし、司書さん、なぜあそこまで個性的な感じなのかは謎。
読書メーターから引用
スーパー図書館司書の小町さゆりさんが、どうにも気になる。彼女を主人公にした章が読みたかったな。
読書メーターから引用
う〜ん、元気づけられらる気はする。でも、話が出来すぎてる感が、少しするのがマイナスだな、と思った。
読書メーターから引用
『お探し物は図書室まで』の悪い口コミを見ていくと、この物語の核となる小町さんのキャラクターが個性的なこともあり、その点が気になってしまう読者もいたようです。
小町さんのキャラクターが故に、もっと彼女の背景を知りたかったという物足りなさを感じた読者もいたようでした。
それだけ何か惹きつける重要な登場人物であったということも窺えますね。
心が温まったという感想が圧倒的に多い印象でした。
『お探し物は図書室まで』を読んだ感想

『お探し物は図書室まで』には、年齢も職業のバラバラな主人公たちが登場しますが、共通点は人生に行き詰まりを感じ、何か「探し物」があるということです。
司書の小町さんは本をお勧めするだけで、何か助言をするわけではありません。
それでも、それぞれに自分なりに答えを受け取ります。それは、探していたからであって、図書室に辿り着いたのも、素直にその本を読んでみようと思ったその行動も、何か探し物をしていたからこそつながっていったこと。
何も無理強いしない小町さんから主人公たちがそれぞれにきちんと解釈して人生を歩き直すのを見届けると、自然と自分も行動してみようという気持ちになれます。
色んな人がきっかけをつかんで人生がうまく回り始める話を読むと、自分の人生の何かひとかけらもどこかで一緒に動き出すような感覚になります。
自分の家の近所にも、こんな図書室があったら…きっと読んだ人はそう思うはずです。
でも、なかったとしても、本から何を受け取るかは自分次第です。
自分にもいつかそんな本との出会いがあるかもしれないと、よりこれからの読書が楽しみになる、そんな一冊でした。
『お探し物は図書室まで』はどんな人におすすめ?

『お探し物は図書室まで』はこんな人におすすめです。
- 人生に行き詰まりを感じている人
- 何か始めたいことがある人
- 人生を変えたいと思っている人
- やりたいことはあるのになかなか一歩を踏み出せない人
- 誰かに背中を押してほしいと思っている人
今の現状から一歩前に進みたい人にぜひ読んでいただきたい一冊です。
きっかけをつかみ行動していくためのヒントを、もし小町さんがいたら?と想像してみると、何か答えが出てくるかもしれません。
おわりに

『お探し物は図書室まで』には、人生に行き詰まりを感じている5人が登場します。
そして皆、司書さんのお勧めの本を素直に読み、現状を打破するきっかけをそれぞれにつかみます。
本当に変わりたいと思っている時には、そうやって思いもかけぬ人からヒントをもらうことがあるのかもしれません。
あなたのお探し物は何ですか?
それをもし見つけたら、何をしたいですか?


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